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「ただ壁を壊すだけ」ではありません!間仕切り撤去リフォームで工期と費用が膨らんだ意外な理由【現場実録・床左官工事編】

広々としたLDKへの憧れと、現場の現実

 

「リビングと隣の洋室をつなげて、広々としたLDKにしたい」 「子供が独立したので、細切れの部屋をワンルームにしたい」

リフォームのご相談で最も多い要望の一つが、この**「間仕切り壁の撤去」**です。 お客様の頭の中では、「壁を取り払う=邪魔なものがなくなってスッキリする」というシンプルな引き算のイメージかもしれません。

しかし、私たち施工する側の視点で見ると、壁の撤去は**「パンドラの箱」を開けるような緊張感があります。なぜなら、その壁一枚を撤去することで、天井、隣接する壁、そして何より「床」**にどのような影響が出るか、開けてみなければ100%確実なことは言えないからです。

今回は、先日実際に施工した現場での実例を交え、**「壁を撤去したら床の補修に左官工事が必要になり、工期も費用も想定よりかかってしまった話」**を備忘録として、そしてこれからリフォームを検討される方への注意喚起として書き残したいと思います。


1. 「壁」と言っても千差万別!構造による難易度の違い

 

まず、壁を撤去する前に確認しなければならないのが、建物の構造と壁の種類です。これによって、そもそも「壊せる壁」なのか、壊す場合にどれくらいの手間がかかるのかが全く異なります。

木造戸建て・軽量鉄骨の場合

 

戸建て住宅の場合、その壁が建物を支えている**「耐力壁(たいりょくへき)」**であるかどうかが最大の焦点です。

  • 耐力壁: 筋交い(ブレース)が入っていたり、構造用合板が貼られている壁。これを撤去すると家の強度が下がるため、原則撤去不可、あるいは梁の補強など大規模な工事が必要です。

  • 間仕切り壁: 構造に関係のない壁。比較的自由に撤去可能ですが、内部に電気配線やスイッチが含まれていることが多く、電気工事が伴います。

マンション(RC造・SRC造)の場合

 

今回の現場もそうでしたが、マンションの場合はコンクリートの躯体壁以外は、基本的に軽量鉄骨(LGS)や木下地で作られた間仕切り壁のため、撤去自体は可能です。

しかし、マンション特有の**「梁(はり)」**の問題があります。 「天井までスッキリ壁をなくしたい」と希望されても、壁の上部にコンクリートの大きな梁が通っている場合、その梁は壊せません。結果として「下がり壁」として梁型が残ることになり、イメージパースとのすり合わせが非常に重要になります。


2. 現場監督を悩ませる「取り合い」の複雑さ

 

壁を解体すること自体は、極端な話、バールとハンマーがあれば半日もあれば終わります。 本当の戦いは、解体した後に現れる**「取り合い(とりあい)」**の処理です。「取り合い」とは、壁と天井、壁と床、壁と別の壁が接している部分のことです。

天井の取り合い

 

壁があった部分の天井はどうなっているでしょうか?

  • 天井材が壁で分断されている場合: 壁を撤去すると、天井にぽっかりと穴(ライン)が空きます。このラインを埋めてクロスを貼り替えるのか、天井全体をやり直すのかで費用が変わります。

  • 天井材が壁の上を通っている場合: ラッキーなケースですが、稀です。

壁の取り合い

 

撤去する壁が、残す壁とT字型にぶつかっている場合、撤去した跡の補修が必要です。クロスの張り替えだけで済むのか、ボードの段差調整(パテ処理)で済むのか、あるいは下地から組み直す必要があるのか。ここまでは、ある程度想定内です。


3. 今回の最大の誤算:床の不陸と左官工事の発生

 

さて、ここからが今回の現場でのハイライトです。 マンションのクローゼットの間仕切り壁を撤去した際、最も影響が大きかったのが**「床の取り合い」**でした。

当初の想定

 

現状洋間2部屋はカーペットが貼ってあり、床のコンクリートスラブに直にフェルトグリッパー仕様で貼ってありました。下地を調整し、新しい防音フローリングを続けて貼れば「バリアフリーの広い床」が出来上がる予定でした。お客様にも「大工工事で下地調整を行います」とお伝えしていました。

解体してわかった事実

 

いざ壁を解体し、巾木(はばき)を撤去してみると、衝撃の事実が判明しました。 撤去した壁の下(コンクリートスラブ)が、左右の部屋で著しくレベル(高さ)が違っていた、あるいは壁が立っていた部分だけスラブが荒れていて大きな溝になっていたのです。

マンションでは、スラブ(コンクリートの床板)の上に直接壁を立ててから、その両側に床を作る工法(際根太など)が取られていることがあります。この場合、壁があった場所は「谷底」のようになっています。

さらに悪いことに、既存の床下地がコンクリート直貼りのフローリングや、モルタルでの調整が入っていたため、大工さんの木工事(ベニヤ板などでの調整)では対応できないレベルの不陸(ふりく・凹凸のこと)がありました。

急遽決定した「左官工事」

 

このまま新しいフローリングを貼れば、間違いなく床が波打つか、将来的に床鳴りの原因になります。 そこで急遽、**「左官屋(さかんや)」**さんを手配することになりました。

行う工事は以下の通りです。

    1. プライマー処理: コンクリートとの密着を良くする。

    2. モルタル・レベラー充填: 凹んでいる部分や、高さが違う部分に、水平を出すための特殊なモルタル(セルフレベリング材など)を流し込む。


4. 左官工事が招く「費用」と「工期」へのインパクト

 

この「左官工事が入る」ということは、単に職人さんが一人増えるだけではありません。リフォーム計画全体に大きな影響を及ぼします。

費用の増加

 

  • 人件費: 左官職人さんの手間賃が発生します。

  • 材料費: レベラーやモルタル材の費用がかかります。

  • 今回は、予備費を見ていたためお客様への追加請求は最小限に抑えられましたが、ギリギリの見積もりだったらトラブルになるところでした。

工期の延長(これが痛い!)

 

これが最も厄介な点です。大工工事なら「作ってすぐ次へ」進めますが、左官工事は**「乾かす時間(養生期間)」**が絶対に必要なのです。

  • 施工日:半日〜1日

  • 乾燥期間: 季節や厚みによりますが、最低でも2日、冬場や厚塗りなら3〜4日はその上を歩けません。

つまり、壁を壊したあと、床を塗って乾くまでの数日間、現場はストップしてしまうのです。 今回も、当初の予定より工期を4日ほど延長していただくことになりました。お客様の引越し予定に余裕があったのが不幸中の幸いでした。


5. まとめ:見積もりの安さだけで選んではいけない理由

 

間仕切り壁の撤去は、空間を一変させる素晴らしいリフォームです。しかし、そこには見えないリスクが潜んでいます。

特にマンションのRC造で、壁の位置を変更・撤去する場合、**「床の下地がどうなっているか」**は解体してみないと100%は分かりません。

だからこそ、私たちプロは:

  1. 現地調査(現調)を念入りに行う: 図面の確認だけでなく、床の傾きや既存の取り合いを詳細にチェックします。

  2. リスクの説明を行う: 「開けてみて、もしこうなっていたら左官工事が必要になります」と事前に可能性をお伝えします。

  3. 余裕を持った工期設定: 乾く時間を考慮しない無理な工程表は組みません。

もし、他社様で「壁撤去なんて簡単ですよ!1日で終わります!」という提案を受けているなら、少し注意が必要かもしれません。「床の補修はどうやって行いますか?左官工事が必要になる可能性はありませんか?」と聞いてみてください。

今回の現場は、左官職人さんの素晴らしい技術により、新築のようにフラットで美しいフローリングに仕上がりました。苦労はありましたが、お客様の喜ぶ顔を見て報われた瞬間です。

お部屋の間取り変更、壁の撤去をお考えの方は、見えない部分の「下地」までしっかりと考えてくれる業者を選ぶことを強くお勧めします。

気軽にLINEにてご相談ください。

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上野 勲 Isao Ueno
  • POSTED:2025.11.29 Saturday
  • AUTHER:UENO

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